UNTIL THE DAY I DIE

 

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LUNA SEAからRYUICHIINORANの脱退を要求するファンの署名活動、というものがかつてあったらしい。

おそらく99~00年頃の話である。昔なんかの非公式っぽいLUNA SEA関連書籍で読んだのと、ネットでも検索すればちょくちょく出てくる。インターネット普及直後に「ファンサイト」でそれを募っていたとか、ライヴ会場の周辺でチラシを撒いていたとか。

 

……RYUICHIは語り草となっている河村隆一ソロのショックを思えばまだ流れ自体は分かるのだが、INORANも指されていたとは最近まで知らなかった。かつての彼は不当にその能力が軽視されていたフシがあるので、その辺を巡ってだろうか。

 

私自身、当時のことは話にしか知らないし、「いなかった人間が過去を斬るのは簡単」と言えばまさにその通りなのだが、しかしまあ「斬らざるをえんでしょう」というような話である。

 

 

 

ともあれ、その話を通して思うことが二つある。

 

一つは、「インターネットで膨大な情報が手に入るようになったと言ってもそういう細かくて厄介な記録は残らないもんだな」ということ。

記録というものは常に更新され更新され余計なものはいつの間にか排除されていく。特にビッグネームを取り扱った話とかになると個人ページをググってもどんどんWikipediaのコピペみたいな文章にしか見えてこなくなっていくあれだ。歴史というものは刻一刻と上書きされているものである。

ましてやいちバンドのファンのお気持ち署名なんか、メンバーも公式関係者も語らなければマスコメディアらにしても別においしくないので、本当にそれが引っかかった人間の記憶でだけ語り続けられるというわけであった。

その時代の記録を残しまたそれを回収するというのは、途方もない作業だがやはり絶対に必要なのだな。

 

 

 

そしてもう一つは、「ファン──もとい客の行いが断罪にかけられることは、よっぽど事件化でもされない限りないのだな」ということ。

例えばバンド史の総括において、メンバーから「RYUICHIが悪かった」「SUGIZOがやらかした」「Jと大喧嘩になった」といった話が出ることはままあっても、「ファンが悪かった」と言われることは決してないのだ。

よっぽど責任感の薄い発信者でもない限りファンにその責任を負わせることなんてまずないし、基本第一としてファンを守るだろう。そのファンの一部がバンド音楽の心血であるメンバー間のグルーヴに手をかけようとも。

意見を挙げることも態度を示すことも私は別にあっていいと思うが(私も口悪いし)、随分と守られきった立場であることは重々理解すべきだな、とも思う。脱退署名の件は、無名なファンの行いは本人が問われることもないということの一つの象徴のような話である(ネットアカウントの時代だとまた少し違っただろうが)。

 

 

そして何より、LUNA SEAの歴史において「ファンの反応」という話は他のバンド以上につきまとい続けてきた話で、だからこそ私はこれ以上LUNA SEAに変な負荷を与えたくないな、と思う。署名の件は当然LUNA SEA側は無反応を貫いたのでその影響の有無なんて語られるはずもないのだが、終幕へと進んでいくメンバーがある程度認知していてもおかしくない話だっただろう。私は、LUNA SEAに対してそんな圧は与えたくない。

サークル意識とか集合体意識とか「ファンかくあるべし」みたいな論調は自分も大っ嫌いだが、いやだからこそ、本体に対してだけは守り通したい意思みたいなものがあるものだとも思う。

 

 

 

 

 

知らない過去話の悪口ばっかり言うのもゲンが悪いので、もう一つ、これは私個人がLUNA SEAに対して背負っている戒めの話。

 

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2007年の、LUNA SEAが7年ぶりに復活したライヴ『One Night Dejavu』。あのライヴを、当時十代だった頃の私は「7年ぶりに突然集まったって凄いライヴになんかならないだろ」と斜に構えて行かなかったのである。「不和で終わったバンドがそのまま戻ってきて何をやるんだ」と。

結果はご存知のとおり、LUNA SEAは90年代を全力疾走したありし時代以上のクオリティをそのライヴで叩き出した。かつての黄金期を凌駕した。それは本当にメンバー全員が音楽の鍛錬を捨てなかったことと、一人一人が余裕を許さないヒリついたバンドのままであったこと、またそれぞれのソロ活動が一見やっていることは違えど「バンドでも発揮していた各々の本領」の延長線上であったこと。そしてたとえ不和で一度終わってしまったバンドであっても、メンバー一人一人全員が「LUNA SEA」に対して本気のままであったからこそ、実現せしめた偉業なのだと思う。

いや今考えても7年間顔合わせもしていなかったメンバーが一発でかつて以上のライヴを実現したというのは異常ではないか(数字に残されない偉業とはまさにこのことである)。

しかし、私はそのライヴを開催前に軽く見て行かなかった。「同窓会みたいなライヴをやるだけなんじゃないか」と思ってしまった。私はLUNA SEAを信じなかったのだ。

このライヴと、これに続く08年のhideサミにも都合を理由にして行かなかったことは(当時本当に自分が嫌になって死にたくなったが)、私がLUNA SEAに対して一生抱え続ける十字架なのです。

 

 

そんな自戒話や、過去に少なからず「ファン」が5人のグルーヴに手をかけようとしたことを思えば、私はLUNA SEAのことはもう二度と裏切らないと決めているのです。

 

 

 

 

 

 

いらん余談:不特定多数を指して「マナーが悪い」「思いやりがない」などと言ってしまえる奴ほどマナーも思いやりも死んでいる人間はいない。