異空 3日目


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今朝撮った、海を行く鴉(クロウ)・イカロス。特に意味はないです。

 

 

 

 

BUCK-TICK『異空-IZORA-』のレビュー記事様。

基本的には非公式記事にはあまり触れないようにしているのですが(単純にSNS交流が下手なので)(皆様凄いから挙げだしたらキリがないので)、これは本当に良い記事だと思ったので是非一読いただけたらと。櫻井敦司──そしてBUCK-TICKが音楽を通して社会や日常と向き合ってきたスタンスが、過去作と今作『異空-IZORA-』を通して丁寧に綴られています。

 

 

新作『異空-IZORA-』は──聴き方は万人が自由である上で──説くならばその社会的・時代的背景を抜いてはとても語れない一作かなと受け取っています。

……と言っても何より曲自身が良くてこそだし、またBUCK-TICKのそのポリティカル性は聴衆に届ける絶妙なバランス感覚と、櫻井さんの「人を傷つけるよりまず自分に傷をつける」という強い姿勢をもって成立しているスタイル。今作にあった「バンド史上最も先行シングルとアルバムイメージがかけ離れていたかもしれない」現象も、このバランス感覚故だろう。

例えば『さよならシェルター』という曲は、リアルな痛み・意義と “作品” 然と立ちうる力の両立をもって「アンネの日記」のような感触だったという個人的感想を、改めて書かせてもらいたい(勿論アンネの日記は大前提として当事者性をなくしては語れないことも重ねて)。

そして、BUCK-TICKが健在かつ進化を継続し続けられる力は、ひとつにはそういった時代の空気にまで含めて敏感かつ表現豊かで、「風通しの悪い作風(因習)」に陥りきらない故だろうとも。

 

 

 

 

 

 

ここからは発売からもう少し自分が聴いた感想を細々と。

 

 

 

今作はやはり櫻井敦司がリードを握ったアルバムだと思う。おやと思ったのが、私が長年抱いていたBUCK-TICKのイメージは “今井が革新的なところへ導いて、櫻井が「安心と実績のBUCK-TICKらしさ」を提示する(そして5人のサウンドBUCK-TICKを完成させる)” という印象だったのだが、今作ではその両者の立ち位置が完全に逆転したかのようにも受け取れる。作曲陣のレパートリーの広さに唸りつつも、櫻井敦司の歌詞や歌唱、その広い楽曲レパートリーを闇で塗り上げるような空気が今作を最も新天地たらしめていると思う。

一方で「いつも通り。今の自分たちとして楽しんでいます」とインタビュー等で語る今井寿。そんな “逆転” とも思わせる構図もまた、バンドのバランス感覚というか阿吽の呼吸の賜物かなとも思ったり。

 

 

曲として特に気になったのが『ヒズミ』。所謂ラスボス枠(無題とか愛の葬列ポジ)と言うには淡々としていて、もっと歌謡曲っぽい曲となっている印象。最初に聴いた時の印象が「超闇堕ちした『THE SEASIDE STORY』辺りみたいだな」だった。

と思っていたら今井さんがインタビューで “ユーモアの入ったイメージだったんだけど、すっごいどんよりした歌詞が乗ってきた” と言われていて、ああやっぱり!と腑に落ちたり。ともすれば「前作だったら舞夢マイムなんじゃないか」というようなジョークまじりな一曲が、いよいよもって『Six/Nine』に勝るとも劣らないシリアスな鋭利さを持ってやってきたような。

BUCK-TICKに対する「邦ゴシックバンドの魔王」みたいないわれが、洋楽への接近よりも歌謡曲の昇華という面から偽りなしになったような。そんな印象。

『無題』と言えばあの曲も「ライヴで大化けしたよな」という記憶が強いので(それは曲自身がかもしれないし、むしろリスナーの受け取りがだったかもしれない)、これらの新曲たちがツアーでどうなっていくのかなあとも。

 

 

もう一つが、これは今作に始まったことではないけど、「BUCK-TICK以外のレギュラーメンバー」の活躍がまた顕著になってきたかなあと。お馴染みエンジニアの比留間氏やマニピュレーター横山さんは言うに及ばず、バキバキの音を届けるYOW-ROW、星野曲の強力なパートナーCube Juice、ヴァイオリン参加は黒色すみれよりさちさん。

ともすれば硬派な人からは「ズルい」とも言われかねない “レギュラー陣” の大胆な参加が、バンドを35年以上も有機的に活動させている一つの力にもなっているだろうし、またその様はまさしくパレードの演奏隊が一人また一人と増えていくようでもある(そこにおいて名を忘れるわけにはいかない森岡賢も)。その上で、看板を背負ってステージに立ちグルーヴを育み続けるのはやっぱりあくまで「不動の5人」なのだ。雨ニ撃タレテ行コウ Boogie。

 

 

 

 

あんまり「新作熱にやられてるだけだろ」みたいになるのも何なので一つだけ敢えて水を差すようなことを書いちゃうならば、「でも今のところは『No.0』の方が好きかなあ」という感想でも。比べて見るとやっぱり今井先生はまだパワーを溜めていらっしゃるという感じがするよね。やっぱり次回作で……?

 

なんて言っててもまだまだライヴツアーはこれから。ユータさんも度々言われるように「アルバムはライヴツアーを経て完成」だと思っているので、ツアーの何処かで、パレードを観に行けるかなと思います。

 

 

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祝祭だ 舞い踊れよ

 

 

 

 

 

5日目の謎追記

 

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これはアルバムをもっと個人的に咀嚼するためのプレイリストなんですが(こういうのを作る遊びが好きなんです……)、

バンドの出発点を鳴らす『Boogie Woogie』から 何処かで生きている誰かに「会いに行く  必ず」と歌う『さよならシェルター』へと直行する流れが偶然できてて、聴いてみた時に不覚にも目頭が熱くなったり。

そういうことかなと思います。

 

(Sidは一周回って逆に入ってきた。Continuous。)