2022.12.29 BUCK-TICK TOUR THE BEST 35th anniv. FINALO

 

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櫻井敦司とくるみちゃんの部屋」最終回を聴きつつ振り返り……

 

 

 

開幕──一曲目はバタくさいロケンで発車する『Go-Go B-T TRAIN』。からのメルヘンチックな名ポップナンバー『Alice in Wonder Underground』

たくさんの名曲が存在するバンドだけど、例えばアリス一曲だけでも「こんな曲を出すバンドに出会えるなら絶対全部追うんだけどなあ」と改めて思ったり。でも、そんなバンドには中々会えない。楽しさ妖しさの中に子どもたちの手を引くような優しさがある。

 

「#あっちゃんくるみちゃん 」「#ときどきまるちゃん 」「#ときどきがっちゃん」な猫だらけEDM『GUSTAVE』から、邪悪なサウンドにして未来への号令が爆進する『FUTURE SONG -未来が通る-』。この2曲でストレートに35周年目の自己紹介って感じだ。

この日はステージ通して今井さんが動き回ってて、常に足を跳ねておられるように見えた。いや今井さんだけじゃなくメンバー全員がかなり動いていた。めっちゃ元気!

 

『Moon さよならを教えて。この曲に武道館はちょっと狭いんじゃないか?とも思うほどの美しき水中のような空間力。

……自分は2月にこの曲について「『Long Distance Call』の裏側みたいな、子との別れを示唆する母親のような印象の歌」だと書いていたな……。

 

そしてこちらも久々に聴いた気がする、デジタル・ダーク・ノイズ・アンニュイ・暗黒舞台的・心象的と “BUCK-TICKっぽさの塊” みたいなナンバーメランコリア -ELECTRIA-』。悪魔的なリズムに、マザー2のラスボスみたいなスクリーン映像になっとる『Villain』(そういえば櫻井さん、会報であのゲームのこと書いてたな)。そしてもはや前アルバムきってのキラーチューンなんじゃないかというところまで発展してしまった昭和歌謡歓楽街『舞夢マイム』。浮遊感の躍動する『MOONLIGHT ESCAPE』アヴァンギャルドでLet's Danceな『ダンス天国』と最新アルバムの収録曲が続いていく。

そこからの大ピースフル・チューンユリイカ! かなり中盤っぽいタイミングで来たので「ここからのセトリ、どうなるんだろう」などとも一瞬思ったが、ここで終わらないのがこのバンド。

 

今年発表の最新曲『さよならシェルター』……優しく舞い踊っていくようなメロディ。櫻井さんが度々床をつき、最後に子どもを抱きしめるようなジェスチャーが印象的だった。

その次は久々に披露されたブルージーでアコースティックなバラード『RAIN』。ラジオでファンメールからのリクエストを取り上げて「やりますよ」って答えてましたねー。満を持して。

主に悲恋や無念を歌った歌なのだと思っていたが、確かに、こうして詩を辿ってみればさよならシェルターとも繋がる『天使とリボルバー』の「リボルバー」な歌だったかもしれない。笑ってくれ  君はずぶ濡れダンス。

 

蝋燭に火を灯したならお馴染みのゴシックソング『ROMANCE』、そして説明不要のラスボスソング夢魔 -The Nightmare』へ。全体通して満足度の高い公演だったが、特に夢魔は今回でベストテイクを更新したんじゃないか。そのくらいストレートにキマってた。

 

ここで本編終了。

 

 

 

アンコールは一曲目に『JUST ONE MORE KISS (ver.2021)』。スタジオver.は自分には爽やかすぎる感じもするけど、ライヴ音源として聴くと淡い響きが絶妙に心地よい。

次に荘厳なレクイエム『JUPITER』。やはりイントロの12弦ギターは美しい。この年を巡る追悼の悲しみをそのままに。

 

メンバー紹介の後、「死を想い、命を燃やしましょう」の言葉をもって、光明と祝祭のゴシックとも呼ぶべきMemento mori。私にとってこの曲は一つのマイアンセム、毎回やってくれていいですよ。そして更に死に向かう生を喝采するように『独擅場Beauty』へ。

 

十二分なフィニッシュをもってこれにて閉幕。かと思ったら、アンコールはもう一度あったのだ。

 

 

三度メンバーが登場して披露したのは、これからもパレードを約束する『LOVE PARADE』。ラスト定番の壮大なシューゲイザーナンバー『夢見る宇宙』。そして、最後はやはり、『鼓動』

櫻井さん、いつもは歌い終わったら跡を濁さずとばかりにさっさとハケていかれるけど、この日は長々とステージを歩き回りたくさんの謝辞を零しておられた。その分鼓動のアウトロ演奏も長く長く、今井ギター・テルミンも歌を紡ぎ続けるように鳴り続ける。

……スクリーンの映像は9月の横浜と同じ映像だったが、自分はそれを眺めながら既に「懐かしいなあ」などと思っていた。なにかと私事でバタバタしっぱなしだった2022年下半期だったけど、それも12月29日で符を打たれてしまえばいい。

 

 

 

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体感楽しくも長いライヴだったなーと思いつつ会場を出れば、気づけば3時間近くも公演していたらしい。BUCK-TICKはアンコール待ち時間も気持ち短めなので、本当に充実した3時間。

 

「バタバタしている」などとぬかしておいて何だがこの数ヶ月RPG(サガ)ばっかりやっているので (笑)、「あーなんだかBUCK-TICKのライヴが終わる時って、RPGのエンディングを見てる時の気持ちと似てるなあ」とか会場で思っていたり。たくさんの景色を探検してまわって、一見ばらばらに見える世界が実は一つのテーマや作家性に統率されていて、一つ一つの旋律にドラマがあって、予想通りにいかない臨場感があって、それらをしっかり回りきって「あーお別れだー」となる感じ。足りなさとか寂しさよりも、「楽しかった。凄かったよ。ありがとう」「また来ますよ」とたくさん手を振りたくなるような感情。BUCK-TICKが「一つのジャンル」「一面的な一枚絵ではなくBUCK-TICKという巨大な大陸」であるが故だと思う。

 

 

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今年のBUCK-TICKの新曲『さよならシェルター』は、誤解を恐れずに言えば『アンネの日記』のような曲だったと思う。勿論、アンネの日記という書物はアンネ・フランク当事者によるリアルな言葉であるところに絶対的な重みがある。だが、そこに生きている子どもたちを丁寧に記すような、いや “子どもたちが抱いているメルヘンと凄惨な現実が押し潰し合っている” ようなその空気感・シンボル性が『アンネの日記』をちらつかせる。

そしてもう一つの理由が「作品性」、という言い方になってしまうが。言い換えるならばむしろ “読ませる力” なり “聴かせる彩り”。櫻井さんの「戦争反対ということをまず当たり前のように言いたい」という言葉を借りるなら、「当たり前のように音楽として流していられる形のよさ」「日常に立てておける一作」。曲を運ぶアニイのドラムは、子どもたちを連れて行くように軽快だと、会場で聴きながら思っていた。

 

今年最も聴いた一曲としても、この『さよならシェルター』を挙げて2022年を締めたい。