『144分間の暗闇爆音強制視聴会』で皆さんにお渡しした花はサイズや形の問題で市場には出せず、本来破棄される花々でした。それらの花を贈ることで花の命も受け取った人の命もどちらも祝福します。#weg_No9 https://t.co/4fdNCRPBaW
— world's end girlfriend (@worldsendgirlfr) 2022年11月14日
ああ、素晴らしいですね。
いただいた状態のもの。後で移しました。
「暗闇爆音視聴会」、当日体調が優れなかったこともあってか感想の置き場に困ってたんだけど、そのお花の話でようやく着地できたかなというか (笑)。
WEGとして6年ぶりのフルアルバムは配信やCDではなく暗闇の上映館で、という触れ込みから。
その触れ込みを見てふっと思い出したのが、ジョン・ケージはレコード等の録音媒体を「不確定的な演奏は繰り返すことはできない。そんな作品の録音には、風景を絵葉書にする以上の価値はない」として否定していたという話（しかし結局ジョン・ケージの作品は他者によって膨大に録音され彼の名を記録化していったという）。
楽曲配信に対してはCD世代が「簡素すぎる」と懐疑し、CDに対してはレコード世代が懐疑し、そしてレコードに対しては……という歴史の流れを思わせる話だし、では「最もよい音楽環境の在り方」みたいなのって結局なんなのだろうと考えさせられる話でもある。
ともあれ、WEG自身もやはり昨今の音楽媒体の多岐化のなかでどういう形がよいのだろう、一番相応しい在り方とはと模索してのこの形だったのではとも思ったり。
で、結局私は不調からか耳よりも140分体を動かせない状態が肉体的に悲鳴を上げてしまったというのが実際のところだったんだけども（おっさんか）。
破壊的ミサ、死滅と回生への願い、そう呼べるような音楽がずっと鳴り響いていた気がします。音はもっと大きくても私はよかったかな (笑)。あと、やっぱりできるだけ一人で集中して聴きたいと思わされた。
過去曲で言えばこれをより壮大・ダイナミックかつ破滅的に140分聴かせる……ような音だったと思う。絶対的な死滅のなかで一縷の希望に祈るような音の時間。
WEGは自分の中では『SEVEN IDIOTS』で気になって、『LAST WALTZ』が大満足の傑作盤で。あとお気に入りが『The Lie Lay Land』か。
今回モチーフ的に語られていた「死と生まれ変わり」みたいなのは、私は不信心な不届き者なのでなんとも思いようがないのだけども。しかしWEGが『LAST WALTZ』の際に津波震災に触れて語っていた
“人間的な喜怒哀楽とか、善悪とかを超えたもので、海は命を与えるものでもあり、奪うこともある、「自然」の圧倒的現象。不謹慎ではないと思うけど、少し躊躇もあるけど、(…)津波＝破壊ということではなくて、あくまで津波や海そのものの在り方が、自分の表現したいものと近いなって。
(…)もっとシンプルな根っこというか、「命とか存在はただあるだけで強い」っていう。だから、ミュージックビデオで日南さんはただ歩いてるだけですけど、それでも「命を産み、奪う海と花が燃える大地の間に存在してるもの」みたいな、そういう強さと美しさが感じられる。”
（https://www.cinra.net/article/interview-201611-weg）
という言葉からは思うところはある。
その話でも触れられているWEGの名曲『Girl』は自分の受け止めとしてもそういう曲だ。悲しみとか愛しさとか喜びとかより、もっと前提的な、「呼吸」とも呼ぶようなもの。生命が生きているすべてへの象徴化なり讃美。それは誰かの生涯をダイナミックに辿るというようなものではなくて、日常の連続の中で一人一人に鼓動しているもの、それを美しく想うことというか。
津波の部分も、分かるところと私はそこまでは言いきらんけどという部分とがあるんだけど、それはまあ無理に言葉にしなくてもいいや。
例えば自然の美しさ・雄大さに触れた時に言われる「景色の美しさ」だか「遠路はるばる歩いてきた甲斐」みたいなのは所詮二次的なもので、そこにはもっと根源的な心身に触れてくるものが何か確実にあるだろう、みたいな。余談だが会場は渋谷だったのだが私はあの辺りの雰囲気がめっちゃ嫌いだ（私情）。
今回の「アルバム」も、そして終了後に手渡された一輪花も、そういうまず「呼吸」への肯定なり想い（それはおびただしいほどの苦しみや自然という根源と溶け合う中で）と取れるものだったかなと思う。
……音源の発売もありますよね？
world's end girlfriend / Girl / from "LAST WALTZ" - YouTube
