ミンサガリマスター インタビュー記事集成

 

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ミンサガリマスターの発売を受け、いくつか公式から制作者インタビュー記事も出ている。非常に嬉しくまた心踊らせて読んでいるので、それらを保管する意も込めてチェックした分だけここに上げておきたい。私的な駄文もあります。

 

 

 

 

 

 

ロマサガ』の自由度と難度が高い理由。『ミンサガ リマスター』河津秋敏氏動画インタビューの内容を全編書き起こし

リマスター発売前の生放送をまとめた記事。以下少し抜粋

 

 

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――『ロマサガ』の自由度が高い理由は?

河津 もともと、どんなコンピューターゲームRPGも広い世界を自由に歩き回ることができる、というふうな設計なんですね。

 でも、『ファイナルファンタジー』にしろ『ドラゴンクエスト』にしろ、シリーズが進むごとにだんだんとストーリー要素が入ってきて、そうするとストーリーをたどっていくことに重点が置かれて、わりと一本道にお話しが進んでいくようになっていきました。

 ストーリーを描くためには必然的にそうなっていってしまうんですけど、そういう方向に当時のRPGが進んでいたので、最初に作っていたように、どこに行ってもいいような形式でゲームを作りたかった。それでいて、ストーリーがちゃんと進んでいくような仕組みを実現できないかということで、模索して作ったのが『ロマサガ』でした。

 

河津神が常々『ロマサガ』に対して第一に言うことが「(原則的な)RPGを目指した」という話。「『はい』『いいえ』じゃなくてもっと面白い返事にしたかったからフリーシナリオを作った」という話もあったと思うが (笑)。いずれにせよ、TRPGでずっと遊んでいたという河津の拘り、「RPGは何が楽しいのか」という原点から生まれたものか。

 

 

――シリーズファンかつ『ミンサガ』未プレイの人に遊んでみてほしい主人公は?

河津 ファンであればジャミル吉野裕行さんの声もすごくいいですし、ストーリーやスタート地点、イベントもいろいろ楽しめるので、ジャミルがイチオシです。

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おー(ジャミルが一番好きなので驚いた)。私のジャミル好き好き話はまた別にするとして。「自由な冒険」と「固有の物語」のバランスが絶妙だよねとか、一般人っぽいけどしっかり主人公に “成る” のがサガらしいとか、あの選択肢テキストの数々はジャミルが言ってるのが一番しっくりくるとか (笑)、その辺なのかなあ。

 

 

 

――アルドラの物語が悲劇的な理由は?

河津 (…)実際の人生のなかでも、みんなが名前を残すような形で成功するわけではないですし、だからといってその人たちが存在しなかったわけでもない。そういうものを描けたらなと彼女のストーリーを作りました。

含蓄ある言葉はさておき 公式のアルドラ猛プッシュに対して私は未だにネタバレの扱い方に揺れている(未だに「アルドラって誰だ」って言う人がいるからなんだけど)。いやアルドライベントは本当に筆者のRPG体験に深々と残るカルチャーショックだったので、自分で触ってほしいんすよね……。

 

 

 

ミンサガ リマスター』真デスとの死闘や17年越しの裏話も。青の剣くらいレアな河津氏と小泉氏の座談会が行われた発売前夜祭をリポート

 

小泉さんのFF2〜ロマサガショックの話。改めても何だしそういう呼び方すら不釣り合いな御方だけど、やはり河津ガチ勢すぎる。

自分の河津ショックは魔界塔士、サガフロ2ミンサガ辺りだったと思うけど、当時一気に回ったからかどういう順番で触ったかの記憶gggg……

 

 

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――高難度バトルだけでなくふつうのバトルも難しいですが、それは『サガ』の世界観に合わせているからですか? それとも性格的に難しいものが好きだからですか?

小泉 僕にとってはいちばんのサービスのつもりなんです。攻略しがいのあるように作りたいということと(…)

すべてのイベントをプレイヤーが当たり前に攻略できてしまうと、おそらく感動は得られない。無念さなどがあって初めて「こんどはうまくやってやるぞ」という想いが生まれ、それをやろうとしたら今度は別の部分がうまくいかなかったりするのがゲームのおもしろいところだと思います。

 

この方もブレない。そして当然だと思う。(純粋に疑問なんだが、PS時代頃によくあった「物語に集中してほしいので敵は弱くしました」とかいうゲームのバトルスタッフ、どんな感情で仕事してたんだろう)物語に集中してほしいなら敵を敵らしく用意しろ。

 

 

河津 完全にリアルな絵が映るゲームはたくさんあり、その中で皆さん作っておられるので言い訳なんですけれど、自分はどちらかというと、どんどんデフォルメしたい。

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河津神と同じ見解かはさておき私も結構同意見。デフォルメってつまり「行間」なので、行間が空いている豊かさ、行間でいい部分を全部表現される厚かましさって結構大きいじゃんって。

余計なことを言えば声高に「リアルなグラでのフルリメイクを!」と言う人ほど実際にそれをやられると絶対文句言うでしょ(自分が思い描いていた行間がそのまま出てくるわけがないので)、とも毎度思う。

 

 

小泉 サルーイン側にも味方するような存在がいてもいいのかなと。サルーイン以外はプレイヤーに味方しているので、あまりにひとりぼっちでかわいそうですから。

 10体の追加ボスには、その裏設定を当てはめました。世界自体がサイヴァの体から作られたというもともとの設定があり、世界にはその血を受け継いでいるモンスターがいて、それらがサルーインに味方する役どころになっています。

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サルーインがあそこまでひとりぼっち(兄妹にも見離され、自分が生み出した手下らにも離反され、挙げ句人間どもには説教をされ)というのはなんらかの文脈的理由があると思っていたのだが、どうなのだろう。まあ一応モンスター達はサルーインの配下だし、ゲッコ族の長もなんとか言ってたし、アリなのかな。繰り返し遊んでいるうちに色々と解釈みたいなものも広がっていくので、プレイしていればまた何か見えてくるかもしれない。

 

 

あと生放送、河津が「スクエニ合併直後で、カラオケでエニ側の連中にメヌエット歌わされて『何だこいつら』と思った」とか話してて吹いた。その空間のムードが想像・納得出来ちゃうのは何故なんだぜ。

 

 

 

ファミ通「『サガ』シリーズ33周年記念!」開発者インタビュー

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ミンサガは(ボス攻略を)正解・不正解に寄せず、そのときどきでプレイヤーが最高と考える攻撃を組み上げることが遊びの根幹」という話。自分はBPや武器を消耗しすぎない省エネ戦法だからか (笑)、そこまでこの言葉のイメージがしっくりきておらず……。スクウェア系は基本「弱点を見つけるバトル」だと思っているところがあったので(大体FFのせいな気もする)意外な意見だった。

筆者的に「自由度が高い一方で緊張感が絶対確保されているラスボス」の代表だと思っているのはFF5ネオエクスデスだったりします。あれもまた本当に丁寧に作られてたんじゃないかなあ(銭投げなんかせんよ)。

 

「仕様ミスを直した」談義サガフロ2のエインシェントカースは敢えて直さないで欲しい(爆笑)。

 

小泉 当時から「僕がプログラム書いていいのか」と思いながらやっていました……ただ、河津さんは「やりたいことを実現したい人間が書くのが、いちばんいい」と

至言。

サガ新作待ってるぞ。

 

 

 

 

[インタビュー]「ロマンシング サガ -ミンストレルソング- リマスター」には,オリジナル版の開発者と当時のプレイヤー,両者の思いが込められていた

 

 

河津 サガシリーズは)とくにゲームシステムは大きく変えてきたので,一度しっかりと整理したかったんです。

 作品の持つ雰囲気や世界観がしっかりできているので,ゲームとしての遊びの部分で挑戦ができたシリーズでもあるんですね。

 そうして変化を続けていたサガシリーズでしたが,それを楽しんでいただけた一方で,一部のプレイヤーを置いてきぼりにしてしまったところも感じていました。長い歴史のなかで作品数が多くなった分,「変えなくてよかった」という部分もまたあっただろうとも。

 サガとはどんな作品なのか。“何を伝えるゲームなのか”を,しっかり考えるべき時期が来ていたんです。

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河津 (マップアビリティの仕様について)これは今でも譲れない部分ではあるんですが,探索にしてもバトルにしても,誰かが作った攻略法に乗るのではなく,プレイヤー自身が考えて解決できるものにしたいんです。“正解”を作りたくないんですよ。

 

また、細部に渡るゲームデザインについての話も。

 

 

 

 

ミンサガ』を2000時間遊んだRTAプレイヤーが、リマスター版ディレクターにインタビュー。深い部分でのこだわりを訊いた

 

 

上野:スクウェア・エニックスのタイトルは、リメイクやリマスターで大胆に変えちゃうタイトルとかもあるんですけど、『サガ』シリーズがそこをあんまりやらないのは、旧来のファンの皆さまへのサービスという意味もあって。

完全にピクセルリマスターを指してるだろ。

 

 

 

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上野:時間の経過と共に、自分の及ばないところで何かが動いているという、時間経過を感じさせることの方が、このシリーズとしては大事だと思っています。

やわらか:普通のオープンワールドだったら、単に自分がやったところだけ終わってほかは何も変わっていないことが多いので、『ミンサガ』は特に独特ですよね。だから本当にやらなかったら、ローザリアだけの話しかしないでクリアしちゃうとかもある。だから、自分はこのキャラクターだけで進めましたという自分だけの物語が作れて、そこは本当にすごいなと。

 

河津が「自由に歩き回れても 用意されたものを全部開けていくだけなら、自分は意味がないと思う」みたいなことを言っていたのは何のインタビューだったか。もの凄い端的に昨今のフリーシナリオやオープンワールド型のRPGと『サガ』の違いが表れた言葉だなあと思った。

「サガこそオープンワールド系をやるべき!」と言われると、自分は一概にそうだろうかと思ってしまう。「自由」と同じだけ時間や選択肢の「取り返せなさ」、ラストバトルへのリミットに覆われているのがサガ作品だというイメージがある。

 

 

 

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上野:引き継ぎは、イベント系は排除させてもらいました。意図としては、もちろんゲームバランスもありますが、一番の理由としては、僕は『サガ』にシナリオを求めているタイプなので、「神から賜りしものは引き継げない」がテーマなんですよね。

『サガ』にシナリオを求めているタイプの人が作品を仕切ってるの、助かる。俺に言わせればFFより更にシナリオゲーやで(しかしオウルの遺品が引き継げるのはどうだろう)。

 

 

 


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やわらか:ミンサガ』は、みんなでワイワイ相談しながらクリアしていくのも、楽しいゲームだと思うんですよ!

上野:そうなんですよ。『サガ』シリーズがそもそも、それぞれのプレイヤーがそれぞれの物語を作っていくみたいなところがテーマにある。今時代が追いついて、リアルタイムに経験者のコメントを見ながら、つまり他人の物語を見ながら、自分の物語を楽しめる時代になっていて、すごくマッチしているなと。その辺がうまく多くの人に伝わればいいなと思っています。

 

あー。なんか、ゲーム機用RPGって一人きりで悶々とやるものみたいな意識が植えつけられてるけど、やっぱり元は「自分はこんな物語だった。旅路だった」「あなたは?」と交換し合うのが醍醐味なんだろうなみたいな。

 

 

 

 

 

 

しかし、いちリマスター作品にこれだけのインタビュー記事が登場する作品があっただろうか。それも「知る人ぞ知る幻のゲーム」的なものではなく、かと言ってガッツリ売れたビッグタイトルでもなく。リメイク作品として原作ファンの不服を買った面も多々あり、しかし一方でこれぞシリーズ集大成だと強度の作品ファンたちも定着した作品。うーん絶妙な位置だ。そんな位置の作品だったからこそ、あまり売れなくとも異様に有名だったし、開拓されまくったし、数多のネットスラングが生まれまくったし、そして今またそのタイトルに呼び醒まされたように多くの人々が集ってくる。

紹介した記事を一つ一つ読み返して、改めて力強い熱意に包まれた作品だな、と思う。私のような記事を広げるいちユーザーなぞから、青の剣の説明とかいちいちしないインタビュアー、小泉さんも再集結した制作陣。やり込みユーザー方々。その誰もが熱をもって作品に向き合い、また喜んでいるのが伝わってくるような気がする。作品が違うがまさしく【とてつもなく大量のアニマが集まってくる!】って感じだ。

私もそんな作品のしがない大ファンとして、非常に幸福である。