Miyu Mifune Fake Live Report 2021.2


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2021年2月25日(木)に某所にて、三船美優のプレミアムライヴ公演が行われた。オフィシャルから届いたライヴレポートを掲載する。

 


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 ※このレポートはフィクションです。少し前に作った「アイマスの楽曲と趣味の音楽を織り混ぜてリストを組むなら~」というのを改めて形に起こしたやつです。実在のミュージシャン、音楽、キャラクターとはまあまあ関係ありません。

 

 

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三船美優が、彼女の誕生日である2月25日に都内・某所にて、プレミアムライヴ公演<三船美優カバーナイトシアター ~愛の葬列~>を開催した。多くのカバー・ソングをコンセプチュアルに織り混ぜ三船美優のステージを構築すると告知された本ライヴは、チケット発売後早くもソールドアウト。同時にストリーミングを通しても配信され、多くの注目の中でこの日を迎えた。この日のライヴは、夜や陰といった雰囲気にフィーチャーし、いつもとはやや違う角度から三船美優の魅力を映すことをコンセプトに開催が準備されてきた。角度を変えつつもやはり三船美優の姿であるよう、三船やスタッフチームが幾重にもカバー案を重ね、ステージのイメージを形にし、新しい手触りのあるスペシャルな内容として準備された。

 

開演時間となり照明が暗転すると、リストの『愛の夢 第3番』が流れ出す。朧げなピアノの旋律とともに、中央のスクリーンに横向き歩く三船のシルエットが映し出される。白と黒で統一されたシルエットフィルムに、「愛の夢」、そして「愛の葬列」と文字が浮かび、シルエットと重なるように下手から紅い和洋折衷のドレスに身を包んだ三船が登場する。

三船が深く頭を下げ一段の拍手が鳴り止むと、マイクを通して三船の歌声が会場に木霊しはじめる。ノイズ・エフェクトが施された歌声から幕開けを飾ったのは、妖艶な女性ボーカルのインダストリアル・エレクトロユニットSUILEN(睡蓮)の楽曲『月に泣く』のカバー。

沈殿なメロディに会場全体を揺さぶるほどのリズム、さめざめとした切れ目を刺し続けるようなノイズ。重厚な楽曲に負けじと歌いぬく三船の姿は、この謎に包まれたライヴの輪郭を予告する。

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次の曲に入る前に、三船はシューベルトの子守唄を口ずさむ。「眠れ、眠れ」でお馴染みのこの歌を三船が歌っているものはプロダクションの企画CDにも封入されたので、懐かしむファンも多いだろう。何度目かの「眠れ、眠れ」の直後、爆音の鼓動のようなリズムが一気にトリップへと引きずりこんだ。massive attackの名曲『Teardrop』だ。

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子守唄から流れ込むように始まったこの曲は、まさにかつて三船が歌った子守唄のifの続きを聴いているかのようだ。

短いMCを挟んで、matryoshkaの『Noctambulist』。

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ひたすら夢幻的で美しい音色と旋律で構成された音達が会場のムードをどんどんと浮遊させていく。曲に合わせて腕を震わせ歌う三船の姿はさながら無重力を束ねる指揮者のようだ。

そのままアンビエントモードを続けるように『印象』。三船と白菊ほたる、浜口あやめとの3人で発表された曲のソロ・バージョンで、厳やかな曲が続いてきたステージを温もりと安らぎで包みこんだ。

 

曲が終わって少しのMCを挟んでいる間に、ステージの雰囲気が「無重力」から「和」に変わった。ミステリアスなSEから始まったのは『雨音はショパンの調べ』。

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小林麻美の名曲だが、楽曲のアレンジは櫻井敦司藤井麻輝によるカバー版に近い。雨音の下を這うようなクールな緊迫感にヒステリアスとも言えそうなピアノの音鳴りが響く。

雨降りのスクリーン演出を続けたまま披露される『エチュードは1曲だけ』。馴染みの曲でステージの演出もほぼスターライトステージのものを再現されているが、前後の曲に寄せた楽曲アレンジとここまでの流れで艶かしさがぐんと上がっている。

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更に追い打ちをかけるように睡蓮の『根ノ音ニタユタヘ』カバー。

リズミカルだが凶悪なリズムに、情念に満ちた歌謡曲のかほり。腐葉土の世界観ここに極まれりと、三船の美しいファルセットが覆い包む。

「さよならまで……どうか、夢を……」と微かな一言を挟んで、ステージは再び静やかな夜闇に戻る。ロックバンドBUCK-TICKの2018年の楽曲『Moon さよならを教えて』だ。やはり壮大に水の中へ包み込むようなバラードだが、ここまでの曲にはない優しさをとくとくと感じる。

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「泣いていたのかしら  もう涙は枯れたのに」「あなたに降れたい  ああこの宇宙あなたに」 真っ暗な宇宙のようなステージに立つ三船とファンの想いがこの歌に導かれているかのよう。「おやすみのキスをして  夢のはじまりね」「流れては消える さよならを教えて」 重厚なバラード調から一気にリズムを上げていくラストパートに、三船の軽やかなダンスが合わさる。

さよならを教えてからそのまま4つ打ちのリズムが鳴り続き、やがてピアノの旋律が加わり、さながら組曲のように自身の代表曲『Last Kiss』へと流れ込む。さよならを悟っていた「夢のはじまり」から、「最後のキス」へ。

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誤解を怖れずに言えば、ここまでのすべての曲目がこの曲のための前フリだったと言ってもいいかもしれない。いや、この曲の世界観や存在感を、それを歌いこなす三船美優を、いくつもの名曲たちをもって最高度に映し上げる流れだったと言うべきか。それに応えるかのようにこの日のLast Kissは最高の完成度だった。割れんばかりの喝采を浴びて、一つの物語を括るように間幕が下り、会場は休憩時間を迎えた。

 

休憩明けのステージでは、三船は黒のパンキッシュドレスで登場。ここから数曲はバンド演奏のパートに入るということで、三船のかけ声でメンバー紹介が行われる。やや天然混じりな三船の紹介をメンバーが笑いながら背中を押す様子が微笑ましい。

最初に披露されたのは、昨年のイベントでもカバーしたSwish!の『モザイクカケラ』。

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三船美優にバンド? と最初はいぶかしんでしまったが、ここでこの曲が披露されることでなるほどとトーンが理解されていく。ここまでの曲目も生演奏と同期を折り合わせた演奏だったが、全部生音での演奏はやはり圧巻でありこのメンバーならではのグルーヴに築き上げられている。

続いて演奏されたのはロックバンドPlastic Treeの楽曲『インク』。淡い音色を容赦のないシューゲイザーサウンドが豪快に包むナンバーだ。

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「赤い 青い 憂い 混ぜ合わせたら こんな色になってしまうの」といった歌詞や緩やかにも憐憫な歌声に、この曲やPlastic Treeと三船美優の相性の良さを感じる。実際、彼らの曲に白羽が立ったもののどの曲を持ってくるかは企画段階で三船も交えてかなり難航したらしい(しかしその結果がインクとは油断も隙もない)。「瞬きほどの闇でこんなにも綺麗」とはまさにこの日の三船を象徴するようなフレーズだった。

突然スクリーンに「Love after Valentine!」の文字が浮かび、演奏されたのはMY BLOODY VALENTINEの名曲『Only Shallow』。シューゲイザーの金字塔からまさかのカバーだ。

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本家マイブラでは膨大な量のアンプがセットされ、着用に配られる耳栓をしてもお釣りがくるほどの轟音で揺れを表現しているが、そこまでの量でなくともかなりの音圧で会場を揺さぶっていく。何より三船の透明感ある歌声が遺憾なく発揮され、空間を揺蕩うような存在感を見せつけた。

 

ニ度目の小休憩を挟んだ後、ハッピーバースデーのピアノ演奏から会場の手拍子のコールが巻き起こる。スクリーンにはストリーミング配信に書き込まれるたくさんの「美優さん誕生日おめでとう!」のコメントがリアルタイムで流れていた。まるで液晶から会場への逆生中継だ。万雷の拍手で迎えられた三船は、会場や演奏メンバー、スタッフ方向に、そしておそらくすべてのカメラにぺこぺこと頭を下げながらバースデーケーキの方へと急かされる。三船美優も今年で26歳だ。プレゼントの一升瓶を抱えケーキのろうそくの火を吹き消した後、三船からの挨拶がなされる。

挨拶を経て「もうそろそろ……終わりの時間になってしまいますけれど…」という前降りから演奏されたのは、『Nocturne』のアレンジバージョンだった。三船とも親交の深い高垣楓川島瑞樹の楽曲で、3年前のイベントでニュー・アレンジとして三船からも藤原肇と共に披露された曲。「夜空の果まで届けたい」と歌うこの曲は正真正銘の “落ち着きを得てもまっすぐな女性たち” のアイドルナンバーであり、アコースティックなバラードアレンジを経てより淑やかさを帯びている。

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深い闇の淵から始まった本公演に、変わりないアイドル・三船美優のきらめく姿が映っていた。

 

 

そして、今一度雨音のSEは鳴りはじめた。

 

先ほどのシックな微笑みに満ちたNocturneとは打って代わって、いや、Nocturneからステージも三船の立つ位置も地続きだからこそ、遠くから聴こえる暗黒のミサのようなコーラスボイスがその存在を示す。

まるで雷鳴が落ちたかのようなズドンという音が、会場の空気を制圧した。朗らかだった三船の顔は、既に冷たさを帯びた憂い人の目に変わっている。

 

『愛の葬列』

 

BUCK-TICKからのカバーナンバーであり、本公演のサブタイトルとしても使われたこの曲。デカダンな荘厳に満ちたレクイエム。

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「愛の葬列が 闇夜を逝くよ  愛の葬列が あなたを連れて」「わたしを連れて」 全てを吐き出すように歌いきる三船の姿にも鬼気迫る。厳やかにも激しい歌にほつれた前髪も汗で張りついていくその姿は、この曲とこの公演名への説得力をまざまざと体現するかのようだった。

何故、愛の葬列なのだろう。おそらくここに立ち合ったすべての人がそれを考えたし、その答えはただひしひしとこれを歌う三船の姿にしかないだろう。棺と葬列、生と死、存在と終わり……。始まりは暗闇でもやがて目が慣れて笑うことだってできるようになる。が、しかしそこはやはり暗闇なのだ。その暗闇は何度でも人の心を握りつぶすように襲い来る。そしてそれほどに絶対な闇の中でも精一杯愛を伝うものが、葬列というものなのかもしれない。曲の終盤、すべて、すべてをなぎ払うように、叩き打つ。すべてが無に還るかのように。そして演奏メンバーが一人ずつ去り、すべての照明が消えた。

 

 

公演終了かというムードの中、すっとマイク越しの三船の歌声が聴こえた。声にもやや震えが残るなか、穏やかな歌声を届ける三船をスポットライトが仄かに照らす。「何故に僕たちは生きる  暗闇走る様に 愛さえ見失う」 BUCK-TICKのバラード『COSMOS』だ。COSMOSがまるで最後の子守唄のように、三船のアカペラでせつせつと歌われていく。

「見えるかい子どもたちよ 歌唄いながら」「血にまみれた愛だけがそこにある」 サビのフレーズを三船が何度か繰り返すうちに、次第に会場の合唱が広かってゆく。

オフィシャルスタッフによると、公演は当初愛の葬列で終わる予定だったが、三船から「どうしても最後にもう一曲何かほしい」と打診があり、何度目かのリハで三船がアドリブで歌いはじめたこの曲が急遽アカペラ・ソングとして採用されたらしい。分かりやすい救済でもなく、悲しみを否定するのでもなく、柔らかく触れる風のように寄り添うような一曲。

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会場全体の大合唱の後、三船が再度「ありがとうございました…!」と大きく頭を下げ、本公演はフィナーレを迎えた。

 

 

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昨年の三船へのインタビューを読み返していると、「まぶしい太陽のように人を導けなくても、月の光のようにみなさんにそっと寄り添いたい」と彼女は口にしていた。それがアイドルとして自分が願う姿だと。この日のステージは普段の華やかな舞台とは違って暗いトーンを主体にしたステージだったが、その中心に立つ三船の姿は強く引っ張るというよりも誰かの心内に寄り添い続けた「月」ではなかったろうか。サブタイトルにもある「葬列」という言葉は少しぎょっとさせる言葉だが、それは誰かに寄り添うという意思の、ある種の最終的な形なのかもしれない。

なかなか明るい話に恵まれないご時世だが、そんな時こそ、暗い夜にもぽつんと灯る月のような存在は求められるのだろう。もう一つ、もはや書くまでもないかのように素通りしてしまっているが、「葬列」というワードにばかり引っ張られてしまうもののその前についていた言葉は、「愛」。これからも、愛を運ぶ三船美優に期待したい。

 

 

Text:おれ
Photo:デレステ、おれ